研究紹介

妊娠期のComfortに関する研究

妊娠期にある女性の、妊娠期ならではの肯定的な体験=快適な体験に着目し、妊娠期の心理的、身体的、社会的変化に適応するために応援しています。

妊娠しているからこそ体験できる肯定的側面を客観的に測定できる尺度開発を行いました。

妊娠期快適性尺度

以下の5因子から構成され、妊娠期ならではの肯定的な体験を測定することができます。

  • 父親へと成長する夫との関係性の深まり
  • (超音波画像や胎動を通した)わが子の動きによる相互作用
  • (家族や友人、職場、妊婦、妊婦経験者、医療従事者などとの)周囲との交流による支え
  • 母親になる実感とわが子への愛着、妊娠生活において変化する自分

35項目から構成されていますが、短縮版(5因子15項目)も開発し、研究で使用しています。

ウィメンズヘルス・周産期看護学分野で開発した
尺度の使用申し込みフォーム

妊娠後期における妊婦の高い快適性は、産褥早期における母親役割獲得を促進します。

妊娠初期から産褥早期までの縦断的調査結果(初産婦114名、経産婦101名)より明らかにしたものです。そのため、医療従事者は妊娠期を通して妊婦の快適性をアセスメントするとともに、妊娠後期には妊婦の快適性が高まるようなケアを提供することが重要です。そのことが出産後の母親役割獲得過程を促進することにつながります。

快適性

Comfortな状態にあることです。「妊娠や妊娠に伴う変化に対する情緒的反応がうれしい,気持がよい,楽しい,楽であるなどの肯定的な感情として評価され,その肯定的意味付けとともに意識化されたもの(中村,2004)」という考えに基づいています。不安やストレス、抑うつといった否定的な感情が少ない、あるいはないことが快適である、ということでは決してありません。妊娠期の快適性を高めることで、妊娠の受容が促されることが明らかとなっていますし、肯定的感情を高めることが否定的感情や不快感への寛容性を高めたり、免疫力をアップしたりします。

当分野で取り組んでいる研究課題

正常経過をたどる妊婦さんだけではなく、切迫流早産などで入院中の妊婦さんが快適に妊娠生活を過ごせるように「妊婦×快適性」を様々な局面からアプローチしています。
現在は、妊娠期の男性が経験する肯定的な感情・体験について明らかにするとともに、測定尺度の開発に取り組んでいます。
また、妊婦が快適に過ごせるようなエビデンスづくりを他団体と共同して取り組みたいと思っています。

研究成果

  • Comfort with Motherhood in Late Pregnancy Facilitates Maternal Role Attainment in Early Postpartum
    Yasuka NAKAMURA, Yoko TAKEISHI, Naoko ITO, Mizuki ITO, Fumi ATOGAMI, Toyoko YOSHIZAWA:The Tohoku Journal of Experimental Medicine, 2015;235(1), 53-59
  • 入院している切迫早産妊婦の肯定的な体験について
    今村麻乃、中村康香、跡上富美、吉沢豊予子:母性衛生, 54(2), 346-353, 2013
  • Assessment of the QOL in Japanese pregnant women: comparison among hospitalized, outpatient and non-pregnant women
    Y.NAKAMURA, Y.TAKEISHI, F.ATOGAMI, T.YOSHIZAWA: Nursing & Health Sciences, 14, .182-188, 2012
  • 妊娠期の快適性に関する尺度の開発
    武石陽子, 中村康香, 跡上富美, 吉沢豊予子.日本母性看護学会誌, 2011; 11(1), 11-18
  • Nursing intervention to enhance acceptance of pregnancy in first-time mothers: Focusing on the comfortable experiences of pregnant women.
    Nakamura Y. Japan Journal of Nursing. 7: 29-36. 2010
  • 妊娠経過における妊娠の受容を高める看護援助の効果 快適さの体験に焦点を当てた看護介入を行なって.
    中村康香. 日本母性看護学会誌 2008; 8: 1-8.
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